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階段の選び方

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更新日:2023/06/12

家を建てるとき、階段を第一に考える人はあまりいません。しかし階段は、デザイン的にも機能的にも住宅にとっては大切な要素の1つです。

まずその形状や構造によって階段はさまざまな種類に分けられています。

設置場所も慎重に選ばなくてはなりません。リビングに造るかホールに造るかの違いで、その家庭の雰囲気に大きな影響を与えることもあるからです。

階段を設置するのあれば、パーツを含め、室内など全体のバランスを考慮して選ぶのが理想的です。

ここでは、そんな階段について、事例も踏まえて一緒に考えてみましょう。

階段の形状

建築物における階段の形状は「直階段」・「かね折れ階段」・「折り返し階段」・「カーブ階段」・「らせん階段」の5つに大別することができます。
構造が複雑であったりデザインが異なっているように見えても、基本的にこの5種類から派生していることがほとんど。
どのような特徴を持っているのか、どんな場所に設置するべきかなど、それぞれの階段について詳しく紹介します。

直階段

直階段

「直階段」は、名称の通りにまっすぐ伸びている最も一般的な階段です。
ただ、その構造上、設置する場所にはある程度の広さや長さが必要とされます。

形状がシンプルなだけにコストもかからず、斜度などを考慮し適切に設置すれば上り下りしやすい階段となるでしょう。
その反面、充分なスペースのない場所に設置しようとすると勾配が急になり、転落などのリスクが増してしまいます。

また、まっすぐな形状なので、高いところでつまずいたり転んだりすると、下まで落下してしまう危険性もはらんでいます。
直階段を設置する場合は、手の届きやすい位置に手すりを設置したり、途中に踊り場を設けるなどの配慮も大切です。

かね折れ階段(折れ階段・折曲り階段)

かね折れ階段

「かね折れ階段」という名称を聞くとあまりなじみのない階段のように思えますが、実際は多くの場所で見かけるものです。

階段の途中に踊り場を設置し、そこで階段が90度向きを変え、上下の階層をL字型につなぐ形状をしています。

こうすることで、限られたスペースであっても階段が設置可能で、踊り場があることから安全性もアップしています。

折り返し階段(屈折階段・回り階段)

折り返し階段

「折り返し階段」は途中に踊り場があり、そこから180度向きを変え、まるで折り返しているように上層階に続く階段のことです。
間取り図ではコの字で表示され、踊り場で一旦足を休めることができて上り下りしやすい形状になっています。
「屈折階段」や「回り階段」という名称でも呼ばれています。

カーブ階段

カーブ階段

「カーブ階段」は、その名が表す通り、全体的に円弧を描いている階段です。視覚的に直階段よりも柔らかな印象を与え、優雅なデザインをしています。
例えば、結婚式の披露宴会場でも使われるような写真映えする階段で、ドレスをまとった花嫁がゆったりと下りてくるのが似合います。
輸入住宅などでは玄関の正面へと装飾的に配置されていることが多く、階段そのものがオブジェになるようなエレガントな造りをしているのが特徴です。
また、枠に収まらないような独特なカーブをつけることもでき、空間に個性が生まれます。
直階段ほどではありませんが、設置するにはそれよりも少し小さいぐらいの広さが必要です。

らせん階段

らせん階段

「らせん階段」は1本の軸を中心に、階段がグルグルときりもみの状態で曲線を描いているものです。
上から見ると円形になっており、ごく狭いスペースでも階段を設置できるというメリットとともに、スマートでおしゃれな印象を周囲に与えます。

外観の種類

階段は何段ものステップが連なってできていますが、1段1段を連結させている構造と見た目によっていくつかの種類に分かれています。
ここでは「スケルトン階段」・「ボックス階段」・「ひな壇階段」を紹介します。

スケルトン階段(オープン階段)

スケルトン階段

「オープン階段」とも呼ばれる「スケルトン階段」は、足を置く踏み板とそれを支えている骨組みだけの構造になっています。
一般的な階段は、踏み板と次の踏板の間が「蹴込み板」と呼ばれる垂直な板でつながっていますが、スケルトン階段にそれはありません。
そのため下の階を階段の間から目にすることができ、上からの光を遮ることもなく、採光に優れているのが特徴です。

ボックス階段(箱型階段)

「ボックス階段」には「箱型階段」の別名もあり、日本でも古くから見られる形状の階段です。足を置く踏み板と次の踏板が垂直な「蹴込み板」で連結されており、まるで箱を積み上げたような構造をしています。その構造のため階段の下がデッドスペースになりがちですが、現在では収納を設置するなどの空間活用をしているケースが多く見られます。

ひな壇階段

「ひな壇階段」は、ひな人形を飾る「ひな壇」のような構造をしている階段のことです。
踏み板と踏み板の間が「蹴込み板」でつながっているのはボックス階段と同じですが、大きな特徴は側面をつなぐ骨組みがなく、板で隠されてもいないことです。
そのため横からみると、まるで紙を幾重にも畳んだ蛇腹状になっているように見えます。
側面の板がないことですっきりとした見た目の印象を与え、階段下に棚やチェストなどの家具を配置できるのも魅力です。
また、階段側の壁に窓を設置したいときなども、光を遮りにくいひな壇階段は重宝します。

階段の配置場所

階段は設置場所によって「リビング階段」と「ホール階段」に大きく分けることができます。

リビングとはもちろん家族が集う居間のこと。ホールにはさまざまな意味がありますが、住宅の場合は主に「玄関ホール」を指し、玄関を入ってすぐのところにあるスペースのことを指します。

リビング階段とホール階段のどちらにもメリット・デメリットがあるので、階段もそれぞれの家庭に合わせて設置場所を選ぶのが理想的です。

では、リビング階段とホール階段について、さらに詳しく解説しましょう。

リビング階段

リビング階段

リビングに設置される階段は、そのまま「リビング階段」と呼ばれています。

リビング階段を設置すると、2階に上がるためには必ずまずリビングを通ることになります。

そのため、在宅している家族や来客と顔を合わせる機会や、コミュニケーションの時間が自然と増えるというメリットがあります。

その反面、プライバシーに欠け、子供が思春期を迎えた頃など、一人の時間が欲しいときには煩わしさを覚えることもあるかもしれません。

機能面では、1階と2階がリビング階段でつながっているため、リビングの冷暖房が2階まで届きやすい構造になっていますが、逆の意味では1階の熱や冷気が逃げやすいとも言えます。

ホール階段

ホール階段

玄関ホールに設置される「ホール階段」は、リビングを通ることなく2階に上がれる構造になっています。

そのためリビング階段とは逆にプライバシーが確保され、その反面、リビングにいる家族と顔を合わせることなく2階に直行できるなど、コミュニケーション不足に陥ることも懸念されます。

また、構造上の理由から、玄関ホールにある程度の広さがないと階段を設置できなかったり、間取りを圧迫するといったことも。

さらにはリビング階段とは異なり、ホール階段に冷暖房が届かなかったり機能がついていないなど、夏場は暑く冬場は寒い傾向があります。

階段を選ぶ際はバランスが重要

階段は目の行きやすい場所なので、選ぶ際にはじっくり検討したいところです。
しかし、だからと言って階段だけ見てデザインを選んでいては、その室内にそぐわなくなってしまいます。
階段を設置するのあれば室内に設置されたときのイメージを大切にし、全体のバランスを考慮して選びましょう。
ここではパーツごとに詳しい説明をしています。階段を選ぶ際、ぜひ参考にしてみてください。

手すりについて

大半の階段には落下や転倒を防ぐために手すりが設置されています。
しかも、手すりはデザイン面に対しても影響を与える大切なパーツです。

階段がシンプルですっきりとした見た目であっても、手すりをデザイン性の高いものにすれば、それだけでもかなりおしゃれ度がアップします。

例えば、黒い金属質のロートアイアン製手すりは重量感があり、室内のさまざまな金具と用いて統一感を持たせることで、内装を古き良きヨーロッパの雰囲気にすることができます。

その一方で、現在手すりは安全性を高めたつかまりやすいものも数多く開発されています。

素材も木製・アルミ製・スチール製・ステンレス製など豊富にあり、耐久性にも違いが見られるため、手すりを選ぶ際にはデザインだけでなく、設置する高さや機能面など家族構成に合わせて選んでみてください。

段数ついて

住宅の階段は、段数がおおよそ14段から15段ほど。1階の天井が一般の住宅よりも高くなる場合には、これよりさらに段数が増えます。

階段の段数を増やすことで、その階段の勾配を緩やかにすることもできます。ただし、その分、階段の距離が長くなるため、それなりのスペースを確保しなくてはなりません。

その逆に階段を段数を少なくすることで、階段下の空間を広々と有効に使えるというメリットも生まれます。

階段の段数は設計士などと相談し、家族が昇りやすく、かつ部屋のスペースを圧迫しない程度の長さにするというバランスが大切になってきます。

また、現在だけでなく、将来のことも見据えた階段を設置しましょう。

階段の幅、長さ

階段は建築基準法によって明確にその幅や長さが決められています。

一般的な住宅の場合、その階段の寸法は、蹴込み板(蹴上)23cm以下、足を置く踏み板(踏面)15cm以上、階段と踊り場の幅が75cm以上となっています。

ただし、実際の階段をこの寸法ぎりぎりに造ってしまうと、高さが急に感じられたりと、上り下りしにくい構造になると言われています。

大人の足のサイズからしても、足を置く板が15cmぎりぎりでは狭すぎます。

足をしっかりと置いて階段を上るためにも、階段のステップ1段はもっと奥行きのある踏み板が理想的です。

階段の素材

リビングやホールなどの室内に設置する階段は、木や金属が素材として用いられていることが多いようです。

木製の階段の場合は、ナチュラルでどんな部屋にも似合うのが魅力です。

片や金属は、スタイリッシュでモダンな雰囲気になりやすく、同時に強度の高い階段を設置できるという強みがあります。

また、このような木製の階段や金属製の階段は、どちらか一方だけの素材を使うと決まっているわけでもありません。

木と金属を組み合わせることで多種多様なデザインを楽しむことができ、住宅に合わせて個性的な階段にすることもできます。

照明について

階段は足を踏みはずすなど、落下や転落のリスクをはらんでいるため、夜間の照明が欠かせない場所です。

照明の種類もさまざまですが、安全面を考慮するなら人感センサーライトも、電気代の節約にも使えておすすめです。

ただし、安全性を高めようとして階段の照明をむやみに明るくするのは考えものです。

直前まで暗い部屋で眠っていたのに、突然明るい光を浴びて目がくらんでしまうからです。

階段に設置する照明は、ほかの部屋の明るさとも合わせて適度な光度のものを選びましょう。

その一方で照明は、室内のインテリアとしても大切な要素となります。

照明の向きや明かりの色味を変えることによって、室内の雰囲気もガラリとイメージチェンジできます。

階段の事例

シャープに「見せる」階段

シャープに「見せる」階段

URL(https://www.step-museum.com/gallery/kinoshita_sharp.html)

階段の裏面や側面をあえて見せるように設計されたスケルトン階段となっており、スチールでできた軸にぬくもりのある明るい木質ステップが組み合わせられています。

スチールが漆黒をしていることで非常にスタイリッシュに感じられ、室内空間に引き締まった印象を与えているのも魅力的です。

スケルトン階段であると同時に適度な高さまで上ったところに踊り場がある折り返し階段でもあり、ゆったりとUターンするように反対方向に向けて上昇するフォルムがリズミカルで楽しいデザインです。

すっきりと洗練されているにも関わらず、実際に階段を上り下りしてみても揺れや振動が少なく安定感があるなど、機能性にも充分な配慮がほどこされてます。

シャープに「見せる」階段の事例

ポップな遊び場と組み合わせた階段

ポップな遊び場と組み合わせた階段

まず目を引かれるのが階段の奥に見える壁面のボルダリング設備。遊び場としても活用できる楽しい要素が盛り込まれた設計となっています。

階段は深い色合いのスチールと、同じく色味の強い木製のステップを組み合わせたデザイン。
スケルトン階段なので、側面が開放的な全面窓になっていてもその光を遮ることなく、日中は太陽によって部屋が明るく照らされます。

スケルトンタイプであることを活かし、階段下には人工芝を敷いて子供の遊び場になっているのも魅力的。日向ぼっこに最適なくつろぎ空間にもなっています。

階段自体はスタイリッシュで洗練されたものに見えますが、機能面も充分満たしており、実際に上り下りしても揺れや振動などはほとんど感じられません。

ポップな遊び場と組み合わせた階段の事例

陽の当たる、屋上へ向かう階段

陽の当たる、屋上へ向かう階段

シンプルな白のリビングダイニングの奧に、L字型のかね折れ階段が採用されています。

壁面に向かうステップがごく短く、そこから90度曲がって長い階段が伸びているのが大きな特徴。

あえて存在感のあるデザインにすることで、階段にはアート的な要素が盛り込まれるなど、まるでオブジェのような雰囲気を漂わせているのも魅力ではないでしょうか。

階段は屋上のスカイバルコニーへと続いていることから、上から明るい光が差し込んでいるのも美しさに拍車をかけています。

「見せる階段」としてだけでなく、スケルトン階段でもあるため階段下のスペースを有効に活用でき機能的。

階段そのものをインテリアとして楽しめるようなワクワク感に満ちています。

陽の当たる、屋上へ向かう階段の事例

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